「やる気が出ない、疲れが抜けない」→それ、男性更年期かも?
こんにちは!
泌尿器科専門医・産業医の石川達郎です。
「最近やる気が出ない」「何となく疲れやすい」「イライラしやすくなった」――
そんな心身の不調を、「年齢のせい」や「仕事のストレス」と片付けていませんか?
実はそれ、男性ホルモン(テストステロン)の低下による「男性更年期障害(LOH症候群)」のサインかもしれません。
男性更年期とは?
「男性にも更年期があるの?」と驚かれる方もいるかもしれません。
確かに、女性のように閉経とともに急激なホルモン変化が起こるわけではありませんが、男性も加齢に伴い、少しずつテストステロンが低下していきます。
テストステロンが一定以下に下がると、以下のような症状が現れることがあります。
- 疲れやすい、朝からだるい
- イライラ、気分の落ち込み
- 集中力の低下、やる気が出ない
- 性欲や勃起力の低下
- 肩こり・腰痛・筋力低下
このような不調が重なると、仕事のパフォーマンスや家庭生活にも支障をきたすようになります。
「誤解されがちな男性更年期のウソ・ホント」
職場でもよく聞く、男性更年期に関する4つの“誤解”をご紹介します。
■誤解①:「男性更年期なんて存在しない」
→ホント:医学的にも「LOH症候群」として正式に定義されています。
ゆるやかに進行するため気づかれにくいものの、れっきとした病態です。
■誤解②:「疲れやイライラは年齢のせい。仕方がない」
→ホント:テストステロンの低下が関与している場合、治療や生活改善で改善する可能性があります。
放置すると、うつ症状や意欲低下が悪化することも。
■誤解③:「男性更年期=ED(勃起障害)のこと」
→ホント:EDはあくまで一症状。他にも疲労感や集中力低下、気分の変化など多岐にわたる症状があります。
■誤解④:「男性更年期になったらもう元に戻れない」
→ホント:テストステロン補充療法(TRT)や生活習慣の改善で回復を目指せます。
筋トレ・睡眠・食事などの基本的ケアも有効です。
職場で気づく“パフォーマンスの変化”もサインに
産業医として職場で働く方と接していると、
- 「何となくやる気が出ない」
- 「集中力が続かない」
- 「部下へのあたりが強くなったと言われる」
といった声を耳にすることがあります。これらも男性更年期障害の一部症状である可能性があります。
特に40代~50代の働き盛りの男性は、責任が増え、ストレスや不摂生が重なることでテストステロンが急低下しやすくなります。
対処法:まずは“気づくこと”から
「年のせい」と決めつけず、まずは専門医の診察や血液検査でテストステロン値を確認してみましょう。
診断がつけば、必要に応じてホルモン補充療法(TRT)や生活改善を行うことで、心身の不調が大きく改善する可能性があります。
最後に
男性更年期は、まだまだ「大袈裟」「気のせい」と誤解されがちなテーマですが、
放置すれば生活の質や仕事の生産性を大きく損なうこともあります。
だからこそ、正しい知識と早期対応が大切です。
気になる症状がある方は、職場の産業医や専門クリニックにご相談ください。
心と体が整えば、仕事の質も人生の質もきっと上がります。
投稿者プロフィール

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しながわ産業医オフィス 代表産業医
産業医としてこれまでに延べ3,000名以上の従業員の健康管理に携わる。
<保有資格>
泌尿器科学会認定専門医・指導医
テストステロン治療認定医
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